舞台『恭しき娼婦』観劇してきました!
タイトルからなんとなーくイメージはしていましたが、「重たい」「難しい」といった感想でした。
出演されている役者の方々の演技は素晴らしくて、どの方も引き込まれるものがあり、息を止めてしまうほど迫力もありました。
物語の流れに沿って、本作品の感想を交えながら書きたいと思います。
Table of Contents
感想
あらすじ等は以前まとめているので、前提情報として知りたい方はこちらをどうぞ!
奈緒さん、風間くんの舞台『恭しき娼婦』が6月から上演されます!まずは概要をおさらい
舞台セット
最近の舞台は、舞台上に傾斜をつけるのですね。ここ最近見た舞台はすべて舞台上に傾斜がありました。
今回も舞台上に傾斜があったので、舞台奥で立っている役者さんもとても見やすかったです。
傾斜がない場合、舞台奥に役者さんが移動すると小さく見えてしまいますし、前方にある小道具等で見づらくなってしまうことがあるので、客席からの見え方を考慮して傾斜がついているのだろうなと思いました。
その分、舞台上に立つ役者さんは違和感があるかと思いますが…。
休憩なしの1時間40分の舞台でした。そのため、舞台セットの転換はありませんでした。
舞台上に用意されていたのはリズィー(奈緒)の部屋。
ベッドやテーブル、ソファー、椅子、掃除機、トランクケースなどがありました。
下手には、大きな窓。
上手にはお風呂場・洗面台へ繋がる扉。
舞台奥は玄関となっていました。
ストーリー
音楽と共に暗転になり、ベッドに横たわるリズィーが登場。
むしゃくしゃしたような様子で、掃除機をかけ始める。
突然、「ジリジリジリ!!」とベルが鳴ります。
そこでリズィーがお風呂場へ繋がる扉に向かって「誰か来た。そこから出てこないでね」と話しかけます。
((このセリフまで、扉奥に誰かがいるとは思っていなかったので、この部屋には2人いたのかと何となく背景が見え始めました))
玄関を開けると、「お願いします」と慌てた様子の男が部屋の中に入ってきます。
この男が“冤罪を被せられて逃走する黒人青年”。
「何もしていないと言ってやってください」と必死にお願いしている様子が伝わります。
((黒人青年を演じた方の目力が素晴らしく、ハッとするような力強さがありました))
この時、リズィーは「何もしない」と言い話すが、「何もしていないと言ってください!」とお願いし続けます。
黒人青年から「白人全員に目を付けられている」という理由を聞き、リズィーは「本当のことを話すわ」となだめる。
さらに「かくまってほしい」と聞かれると、ごたごたには巻き込まれたくないと追い出します。
しばらくすると、部屋の奥に潜んでいたフレッド(風間俊介)が出てきます。
警察が来たのかと怪しみます。
((声の低い、いらだった様子の風間くん、印象的でした。はだけた白シャツ。普段とのギャップですね))
フレッドがベッドを見て、「罪のにおいがする!」と怒鳴り、片付けるよう指示。
((昨夜あったことを思い出したくない、そういった印象を持ちました))
窓を開けたリズィーが街の様子を話しているとき、フレッドは白人なので「黒人が嫌い」であることを全面的に見せつけてきます。
昨夜あったことを楽しそうにフレッドに話すリズィーですが、「悪魔だ!」と怒られます。
夜のことは昼に話すことではない、と怒る。
話に決着をつけるため、いくらなのかリズィーに聞くが、フレッドが内容を覚えていないのであれば無銭で良いと言います。それでも、いくらか?と言い責めるとリズィーは最近ここへ来たばかりのため、フレッドが最初のお客であることをは話す。
しかし、いくらで自分が判断されているか知りたくなり、私に対して払える分を頂戴といった。
結果は10ドル。
若いリズィーはたった10ドルなのかと言い責める。この若さで10ドルなのはありえないと怒ります。
((ここまで明るく振舞っていたリズィーですが、一変して思ったことをはっきり伝えられる強い女性なのだなと思いました))
フレッドがクラークの息子であることを打ち明ける。
信じないリズィーに写真を見せて本当であることを信じ込ませます。
朝食や街並みを思って、リズィーは羨ましがる。
お金持ちであるがゆえに、黒人と白人には差があることを教えます。
フレッドは先日あった白人女性に対する事件を話す。
その女性がリズィーであることを問い詰め、真実を聞き出します。
街中で広まっている偽りを話すフレッドだが、リズィーは真実を語る。
街中で広まっている噂と真実は全くの反対。黒人がやったことではなく、白人がしたことだと真実を伝える。
しかし、フレッドはなぜ黒人の方を持つのか怒る。
そこで、銃で撃たれて亡くなった白人はフレッドの従妹トーマスであったと打ち明ける。リーダーだったトーマスが悪いのかと。白人は悪くない。そう淡々と話す。
そうこうしているうちにリズィーの家に警察がやってくる。
リズィーはフレッドに部屋に隠れるように言うが、フレッドが「ここにいる」と警察に話し始める。
そこで、リズィーはフレッドが警察と繋がっていることを知り、今までのことが罠だったのだと知る。
ここからリズィーへ尋問が始まります。
黒人がやったことだとサインしろと、フレッドが怒鳴りつけます。将来有望な白人トーマスが悪いのかと。
「白人は悪くない」なフレッドだからこそ、黒人がやっていないことを許せない。
黒人をかばってていいのか、早くサインしろ、と強制し、怒鳴り続けます。
そこへ、突然おじいさんがフレッドをなだめに来ます。
温厚そうなおじいさんで、リズィーに寄り添うように話を聞き始める。
真実を話したリズィーの話を聞き、おじいさんはそうですかと話を聞き入れて帰ろうとしました。
そこでボソッとトーマスの母親(そのおじいさんの妹)が悲しむなということをつぶやきます。
ここからおじいさんによる話術、一種の洗脳が始まります。
真実を話すリズィーは悪くないのだとする一方で、トーマスの母親は悲しみ、苦しむ生活になるだろうと。
真実だから仕方がないとしながらも、その真実は当事者の中の真実であって、世間での真実はまた違うのではないか。
そうおじいさんの話を聞いているうちに、リズィーは何が本当のことでどうすればよいか悩んでしまいます。
「こんなことになるのなら、本当に黒人の人が悪者だったら良かったのに」と吐露し始めます。
そんなリズィーの様子を見たおじいさんは「あなたが思い悩むことはない、真実なのだから」と。さらに優しく、けれども圧があるような口調でリズィーに語りかけます。
その様子がゾッとするような。決して逃げられない圧を感じました。
((とにかくセリフに抑揚があってハッとさせられるし、逆らうことのできない無言の圧力のようなものを感じました。舞台に出ている当事者でなくても自分が悪いことをしているのではないかと錯覚してしまうような怖さがありました。役者さんすごい、、))
そして、ついにリズィーはサインをしてしまいます。
警察たちが出て行ったあと、しばらくすると黒人青年がリズィーの家に逃げてきます。
本当のことを打ち明けられなかったことを後悔しながらも、なぜ私がアナタを匿わなければならないのか。若干自暴自棄になっているリズィーの様子は、見ていて苦しいものがありました。
あの時、本当のことを話したかったのに話せなかった空気感。強く言えなかった悔しい気持ちや自分が知っている真実を認めてもらえなかったことなど、様々な感情が渦巻いている様子に見えました。
罪のない人間が目の前にいて、裏切ってしまった自分に助けを求めている。
「後悔」で押しつぶされそうなリズィーの気持ちを思うといたたまれない気持ちになりました。
その後はフレッドが家にやってきて、黒人青年を追いかけます。
銃の発砲音が鳴り響く。
「白人が善、黒人は悪」
最後まで揺るがなかったフレッドの考え。
無実の黒人青年。
フレッドによると、銃に撃たれることなく逃げ切ったそう。
((考え方は偏見があるフレッドですが、そこまで恐ろしい行動をしなかったと知り、少し安心したセリフでした。))
最後、ソファーでリズィーとフレッドが座って会話をします。
そこで、フレッドが実はクラーク家の息子ではなかったことを告げ、幕がおりました。
((この最後のシーンで、リズィーに全てが黒人の罪だと認めさせるための工作だったと分かり、鳥肌が立ちました。巧妙すぎる。娼婦と出会い、名を偽り、虚偽を認めさせる、、恐ろしい))
さいごに
休憩なし、且つ舞台転換もなし。
たった1部屋の中で繰り広げられる物語。
想像していたよりもテーマが重く、考えさせられる舞台だったなと思いました。
出演されているキャスト皆さん本当に素晴らしく、「恭しき娼婦」の世界観に入り込んで感激していたので、あっという間の1時間40分でした。
カーテンコールでも、役のまま挨拶をしていたので皆さん険しいお顔でした。
最後くらいは笑顔が見られるかな?と思いましたが、そんなことはありませんでした(笑)
精神的にも辛い舞台だったと思いますが、とても考えさせられる素敵な舞台でした。
「人間の権利」とは何か。「尊厳」や「自由」とは何なのか。
他人事として放っておいて良い問題ではないなと思いました。
キャストの皆さん含めスタッフの皆さんもお疲れさまでした。
本日はここまで!