舞台『広島ジャンゴ 2022』を観劇してきた!東京・大阪ともに無事に終幕※ネタバレあり

先日、大阪公演の大千穐楽を迎えましたね。

いつものごとく、感想を書きつつ振り返りたいと思います。

舞台の概要についてはこちらを記事にまとめています!
4月から東京公演スタート!舞台『広島ジャンゴ2022』についてまとめてみた!

感想

あらすじを含めて

広島の牡蠣工場での1シーン。

周りにいる社員やバイトに意見を合わせることなく、黙々と作業をするパートの山本(天海祐希)。

この牡蠣工場では、全員が歓迎会に参加しないとボーナスがもらえないという設定でした。参加しようとしない山本に対して周りのスタッフ達がガヤガヤと文句を言います。


「あなた一人が参加しないだけで俺達のボーナスがなくなるんですけど?」

それでも頑なに参加しようとせず、スタッフたちは呆れてしまいます。「コミュニケーションは取れない」「何を考えているか分からない」

そんな時に、工場長(仲村トオル)が登場。

舞台の設定は広島なので、陽気に広島カープの応援歌を歌い始めます。それに合わせてスタッフ達も陽気に合掌し始めます。もちろん、応援歌を歌うときも黙々と作業を続ける山本。

とにかく山本に対して暗い印象を持ってしまう、そんな雰囲気でした。

そしてその様子を見て社長が歓迎会がどのようになったのかを確認します。強制はしませんが、基本的には参加してもらっているんだよねと圧力をかけて、退散します。

この様子からも嫌な奴だなというのが分かります。

自分の意志で決めて良いはずなのに、「今までがこうだから」「社長が直々に言ってるのだから」「他のみんなはやっているのに」。同調圧力って怖いなと舞台序盤で感じました。


残業することに対して断りを入れていたにもかかわらず、シフト管理を任されている木村(鈴木亮平)が、「今日は残業もあるので少し食べておいた方が良いですよ」と優しさから声をかけます。

でも、自分の意思を持っている山本は「残業はできませんとお伝えしました。面接のときも残業はしません、と話しています。」と残業をしないと主張します。

そんな山本に対して木村は

「その時はそうだったかもしれませんが、今は状況が違うでしょ」

このセリフを聞いて、ブラック企業ってこうやって社員をだまして、同調圧力でうまくやっていっているんだな、面接時とのギャップが生まれる原因だな、と思いました。仕事がしにくい環境だとここまでのやり取りで感じました。


舞台のテーマについて、何となく理解し始めたころ。

急に木村がノリノリでマイクを持って歌い始めました(笑)照明も明るく、ピンスポットライトが目まぐるしくチカチカと舞台上を照らします。クラブのような雰囲気でした(木村1人が歌っているだけですが)

最初何が起こったか分かりませんでしたが、感情の高ぶりを歌に乗せてストレスを発散しているということが分かりました。

まさか鈴木亮平さんの歌を聴けるとは、、、
新鮮でした!

その後、急にスーツ姿の女性が現れます。(後にこの方が木村のお姉さんで、自殺してなくなっているということを知りました)嫌そうにする木村とは裏腹に、ケラケラと楽しそうに笑う女性。

これは木村が夢を見ていたというシーンでした。

後のシーンと比較すると、とても心がきゅっとなるシーンです。


そして急に木村がデカプリオという名の馬になります。

今までコミュニケーションを取ろうとしていなかった山本もジャンゴという名で登場します。

どこからどう見ても”山本”なので木村は必死に何をしているのか聞きますが、ジャンゴの娘に馬として扱われてタジタジに。

あまり意見を言わない山本が娘や馬に対して次々と指示を出す姿は、牡蠣工場で働いているときとは対照的でした。

ここからが西洋のヒロシマとして描かれていきます。

西洋のヒロシマも登場人物は全員牡蠣工場で働いていた方々です。工場長もヒロシマの町長として登場するので、広島での人間関係や役職もそのまま引き継がれているような状態です。なので、デカプリオ(木村)だけが状況を呑み込めず、ジャンゴにいろいろと指図されることになります。

デカプリオは自分が馬だとは思っていないので、あーだこーだと話しますが、この声は周りにいる人にも人の言葉として聴こえています。そのため、「馬なのに喋るー!」と町の人に面白がられることに。

ちなみに、ジャンゴは夫を殺したとして懸賞金をかけられているいるため、娘と姿を隠しながら生きています。
そんな中出会った町民たちとの町の問題について巻き込まれていきます。


ヒロシマでは水不足のため、唯一井戸がある町長から水を購入し、水税を支払って生活しています。

町長からは「この町には水がない」「井戸を作れない」と聞かされてきたがために町民は、”水はないもの”だと思い、町長に対して水税を支払って水を大事に大事に使って過ごしています。

そんな中、1人の家族がみんなで水をたくさん使えるように水脈を探そうと行動していました。その際に、お金が底をついたからお金を貸してほしいとみんなから徴収して井戸を掘り進めていきます。お金は井戸が掘ることが出来たときに返す、という約束で。

すると、井戸を掘り起こしていると知った町長が妨害します。

妨害されたことによって、徴収したお金は返すことが出来ないだけでなく、みんなから責められるようになります。お金を渡したときは、快く送り出していたはずなのに、状況が変わると人って一変してしまうんですよね。

結果、父は水税を徴収する係に町長から命じられ、母は酒場で売春の仕事で稼ぐことで借金を返していくこととなってしまいます。

正しいことをしている人が悲しい結末になってしまうのは、「悪知恵が働く」「嫌がらせをする」「発言力が強い」こういった要素を持っているだけで真実を簡単に捻じ曲げて、周りにいる人たちを洗脳して誘導させるのだなと考えさせられるシーンとなりました。


ジャンゴの娘も水脈を探そうとしていた家族の娘も、町長の手下であるメンツに目を付けられます。

そんな時、町長の弟を含めた男4人くらいから娘2人が襲われてしまいます。ジャンゴのようにピストルを常備していたジャンゴの娘は自己防衛のために町長の弟を撃ってしまいます。

その瞬間、ジャンゴの娘は自分が父親を撃ったことを思い出します。


そして、町長の弟を撃った罪でジャンゴの娘は捕らえられてしまいます。

そこで、ジャンゴが自分の懸賞金をエサに、悪人たちと対立します。ピストルの撃ち合い、デカプリオの応援ラップ。シリアスなシーンのはずなのに、ラップがあることで、なかなかコミカルなシーンとなっていました。

((天海祐希さんの立ち振る舞いがとにかくかっこいい、、、))


ジャンゴやジャンゴの娘をヒロシマの町から遠くへ逃がしたデカプリオ。その後、夢を見ます。

またまたスーツ姿のお姉さんが登場。

ここでお姉さんが自殺した理由を木村は聞くこととなります。

いつも昼休憩の時間が短くなってしまうお姉さん。その日は久しぶりに時間が取れそうでコンビニで昼食を買いに行こうとしたところ、「ついでにおにぎり買ってきてもらってもいい?」「私もー!」「おかかで」「梅」「お茶も」、、、と数人から次々に食べたいものを言われしまい、買い忘れちゃダメだと手にペンで急いでリスト化して買いに出た。

昼休憩の時間が刻々と迫ってきていたため急いで向かっていると、気付くと手に書いたメモが汗でにじんで読めなくなってしまっていた。そうしていると、「自由になりたい」「楽になりたい」。そう思ったときには橋の上から川へ飛び込んでいた。

「水性ペンで書いてしまうなんてお姉ちゃん馬鹿だよね」と笑って取り繕うお姉さん。
その明るさが本当の思いを覆い隠してしまって他人に気付かせない、心配させないようにしているのだと分かると苦しくなりました。

明るく振舞っている人は暗い表情をあまり見せない。明るく振舞ってるから平気だろう、と他人は思ってしまう。だからこそ、木村もお姉さんに対して悩んでいるなんて全く思ってもいなくて、お姉さんの辛さに気付くことが出来なかった。

お姉さん自身も「明るい人」「悩みがない人」「うまく仕事をこなしている人」などのように「出来る人」というレッテルが邪魔をして木村に本当のことを話すことが出来なかった。

結果的に1人で抱え込んで命を絶つこと自然と選んでしまった。

これも山本や木村たちの牡蠣工場でも言えることだとお姉さんは伝えたかったのだと思います。状況は違えど、何か事情を抱えている、1人でも話を聞いて理解しようとしてくれる人がいることが大切なのだと。

会社の在り方が変わりつつあるとはいえ、やはりこういった会社が存在しているのだろうと思うと、気付いてあげることで少しでも苦しい思いをしている人が生きやすい環境になるのではないかなと思いました。

この1シーンだけでもとても考えさせられるシーンでした。


デカプリオ(木村)の夢から覚め、、、

ジャンゴたちは、水がせき止められていて、ダムになっていることを知ります。町長がわざと水を止めて、町民からお金を徴収していることを知ったジャンゴは再びヒロシマの町に戻ります。

そして、町長と会う前に水脈を探そうとしていた家族に水がせき止められていたこと、そこにあるダムを開放することを伝えました。

町長との戦いは無事にジャンゴが勝ち、勝利を得たと同時に町に水があふれるようになりました。


そして、また牡蠣工場のある広島に戻ってきます。

舞台の序盤と同じように、懇親会について山本に出席について確認する時、木村は参加しない事情を聴くようになります。お姉さんからの言葉が影響していることが分かります。

山本が娘との時間を大切にしたいということを弱々しくも伝えたことで、木村は懇親会について「自由参加」にすることに決めました。すると、ボーナスはどうなるのだ、とか文句もありましたが、中には「○○(忘れてしまいました…北海道フェアだったかな)に行きたいから不参加で」という夫婦も。

自由に選択できる環境でなければいけない、本来はこうあるべきだと思います。懇親会の参加と仕事を結び付けられて、ボーナス支給をエサにするのも嫌らしいなと思いました。

こうして、同調圧力の強かった牡蠣工場も木村の行動がきっかけに少しでも変わると良いなと思いました。

最後に

お話のテーマは軽いものではなく、現代社会の問題とも言える重たいテーマでした。

ただ、鈴木亮平さんのラップの歌があったり、馬のデカプリオのセリフが面白かったりしていたので、全体を通して重たくなりすぎないような工夫があり、見やすい舞台という印象を持ちました。

お姉さんの告白をきっかけに、木村が行動を起こしたこと。大切だなと思いました。

環境をすぐに変えることが出来なくても、誰か1人でも辛い思いをする人が削減できると大きいですよね。劇的に変えることが出来なくても、話を聞いたり、理解しようとする姿勢を持つことが出来る人が少しでも多くいてくれると良いなと思います。

本日はここまで!